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そういえばコウくんが酒呑んでるとこ見たことない、と崇史は気付かされた。一緒にいる時は我慢してるのかな。別に呑んだって構わないのに。まだ子供だから、大人の彼に気を遣わせてしまう。困らせたくないと思いながらも、困らせるようなことばかりが口をついて出てしまう。まだまだ子供だなあ、と自分に少し呆れる。
「ねえ、年賀はがき余ってる? 年賀状出したいんだけど」
居間の家族に尋ねると、サイドボードの上にあるよ、と母親が指差す。探すと宛名の書かれていない年賀状が数枚あった。富士山と初日の出というオーソドックスな絵の下に刷られた住所と一緒に、家族全員分の名前が書かれている。
「こういうのじゃなくてさ、名前が入ってないやつないの」
「あんたの名前も入ってんだからいいじゃない。嫌なら白いやつが余ってるでしょ」
「大体なんで僕の名前も入れるんだよ。恥ずかしいだろ、もう高校生なのに……」
「タカちゃんゲームやろうよー」
甥たちが足元にまとわりついてくる。
「今忙しいから、あとで。あっち行ってな」
「あんたちょっとくらい遊んであげなさいよ。大体ねえ、高校生が夜出歩くなんて」
「崇史、コンビニ行くけどあんたも行く?」
「行かない。今、忙しいから」
なんでいつもうちの家族はこうなんだろう、と溜息をつきながら、足の踏み場もないような居間から抜け出て。ノイズに耳を塞ぐように、崇史は自室のドアを閉めた。真っ白なハガキを前に、何を書くか考えあぐねる。
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