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マイカは秒殺する
少なくなったとはいえ、盗賊が現れなくなったわけではない。
護衛の冒険者達――もはやマイカにとってすら怪しい認識なのだが――の間を抜いて襲撃を試みる輩は、まだまだいた。
「ふげひゃっ!」
「……」
しかし、マイカを微妙な表情にさせこそすれ、彼女達の――正確にはマイカを背負うエムジィの――足を止めるには至らなかった。
しかし――止まった。
エムジィの足元に、男が倒れている。首から血を流している。だがそれは、彼女が追わせた傷ではない。盗賊ではなかった。短髪に整えられた髭の青年。片手で首を押さえ、もう片方の手で襟の裏の徽章を示しながら、彼は言った。
「百足だ。百足が……」
そして、目で方角を指し示す。
何度も。
エムジィは見た。
青年が目で指す、その反対の方角を。
言った。
「マイカ様。ここから後ろ歩きで10歩進んでください。それから、ベルトを……合言葉は、憶えてますか?」
「はい。――でしたよね?」
「ご明答」
「あの。ベルトをあれして、合言葉を言った後なんですが――振り向いて見てもいいですか?」
「構いませんよ。あまり、お勧めはしませんが」
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