83人が本棚に入れています
本棚に追加
その横では、少年――エミリオが微笑んでいた。
マイカも微笑って言った。
「泣かないで、ルンナ。きっとまた――そうね。すぐ会えるわよ」
「でも! 私、マイカさん!」
「いいから、いいから」
前に出ようとする少女――ルンナを手で制し、マイカは続けた。
「これまで、私がお礼を言おうとするたび、ダッカスさんは仰いました。『当たり前のことだ』と。でもその当たり前は、誰にでも訪れるものではありません。いまの私にはよくわかります。ダッカスさん。そしてみなさん。本当にお世話になりました。みなさんのおかげで、これからの私は生きていくことが出来ます。この半年間の、この御恩は決して忘れません」
言ったその声が。その表情が。それまでなんとか堪えていた皆の涙腺を決壊させた。ダッカス氏も、身長2メートルの巨体を縮め自分の腰程までもない少女に顔を寄せた。
「マ、マイカちゃん。王都に着いたら手紙を送ってくれよ!」
「はい! もちろんです。着いたらすぐに!」
「お、落ち着いてから。落ち着いてからでいいからね。困ったことがあったら、気を使わずに……うぐぅ!」
「は、はい。それではみなさん。ごき、ごき~」
最初のコメントを投稿しよう!