不死の通信兵と次代の魔女

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 乾いた血に染まった俺とクリム少年にどんどん目線が集まり、クリムは硬直した舌を必死に動かして「持って、ない」と答えた。俺は再び聞くありふれた答えにちいさく鼻をならした。 「持ってないなら持って来い。そこの店で待ってるから。急げよクリム・バスタル」  名前を呼ばれ、完全に逃げ場を失ったクリムが、血の気の引いたそばかすだらけの白い顔で走り出した。折れそうに細い足がもつれて転げそうになるのを見送り、見物人たちをぐるりと見渡してやればさっと目を逸らされた。  こんな光景も見慣れすぎて、血塗れの服で飲食店に入るなどなんとも思わなくなっている。大変迷惑だろうと思うが、それは俺には全く関係のない事だった。 目に付いたレストランと名乗るには寂れすぎている食堂へ足を踏み入れると、従業員らしい若い娘がぎょっと目を剥いた。 「あんたちょっと待ちな、椅子が汚れるじゃないの!」  黄ばんだ新聞を掴んで来た娘が、汚して何の問題があるのかと思う程度には古く汚れた椅子にそれを敷いたので、大人しくそこに腰掛けた。向かいの席に、ルーシーも俺に倣って座る。 「兵隊さん、出来たら着替えてからにして欲しいわ」 「悪いな。いま使いをやってる」     
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