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俺の答えとルーシーの感想は、おそらくすれ違っている。ルーシーの問いは、他においしいものの比較対照がなく、俺の答えは本当においしいかどうかがわからないからだ。
おさげ娘が持ってきた数着の服と靴をルーシーに合わせて居るところに、ようやくクリム・バスタル少年が戻ってきた。青い顔で差し出してきた紙幣はやはり減っていたが、死んでいた俺が悪いので追求はしない。
「なぁ、あんた、もしかして」
「なぁお前、もしかして口にしようとしてる?」
そばかす面の少年が、ひゅっと息を飲んだ。その怯えた瞳には、冴えない中年の、昇進にも縁のなさそうなうねった赤毛の、くたびれた髭面が映っている。
「ラッド、みて。これは似合っていると思う?」
ルーシーに呼ばれ、振り返る。クリム・バスタルが転がるように店を出ていき、おさげ娘が不思議そうに首を傾げたがすぐに興味を無くしたようだ。ルーシーは雨除けのフードがついたポンチョの下に軍服に似たポケットの複数ついたカーキ色のシャツと、同色のズボンを身体にあてて見せてくる。動きやすいし、十分な服装だ。
「靴もサイズが合ってよかったわ。古いけど、おばあちゃんが縫ってくれたから丈夫よ。おばあちゃんは裁縫がとても上手なの」
「あんたもこれを着てな。母に手紙を届けてくれるんなら、無碍にはできないからね」
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