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人波を縫い、射線上にできるだけ難民以外が入るように走る。スナイパーは二人、自国民を殺すのは後々問題になるから上層部はいい顔をしない。
大陸を縦断するコーコント街道は残り三分の一。ここまでで八年、殺され慣れてきた今となってはあと二年もあれば目的地である西の果て、コーコント共和国にたどり着く。度重なる戦争と内戦と飢饉でコーコント王国だったり占領されてコーコント自治領になったりと国の形は変わっているが、そこが俺の最後の地だ。
魔女ケネシアの呪いは、そこに行けば解ける。それだけが俺の希望だった。
「ルーシー! 俺はちゃんと死ねるんだろうな!」
「そ、それは、保証、する」
がくがく揺さぶられながらルーシーが答え、俺は鼓動が高鳴っているのか息切れなのかがわからなくなる。魔女の約束は、契約と同義だ。それはこの身に沁みて知っている。
五ブロック以上を走り抜き、無許可の市場が街道両サイドにひしめきあう場所でようやく速度を落とした。
俺はコーコント街道しか進めないし、一度通り過ぎた場所を戻ることも出来ない。そして死ぬ事を恐れもしない。
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