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たった今命を狙われたその足で、生活用品を買い、ルーシーの下着も買い込んだ。軍の配給品を横流しする店では古びたデントラ国の軍服もある。国際郵便配達員の印章が入った横流しの正規品も購入した。停戦時下に副業をする軍人は決して珍しくない。
ルーシーは珍しそうに品物を見ていたが、足が痛むのか背中から降りようとはしなかった。手持ちの金が心許なくなって来たが、今日は何ヶ月かぶりに宿をとろうと思う。
「娘連れて国抜けかい? 西はまだ燻ってるから行くなら東にしときな。そんな可愛い子なんてあっという間にどうにかされちまう」
「ありがとう、そうするよ」
瞳の色を揃えたせいで、皆ルーシーを娘だと勘違いしてくれる。軍支給の二八セラバレットを僅かばかりに値引きしてくれた男の片目には、砲弾の破片が未だに埋まっていた。刺さっている部分が深すぎて摘出出来ず、いつか鉛中毒か寝ている間に脳に刺さって死ぬだろうと笑いながら説明してくれるのを、ルーシーは怯えもせずに聞いていた。
自動装填銃を扱うと、命はぐんと軽くなる。幾度も銃は盗まれたし取り上げられたが、その度に同じ銃を買う。
「ルーシー、俺は出来るだけ死なないようにする」
「そう」
「協力してくれるか」
「するわ」
簡潔な返答。それで十分だ。
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