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「わたしも行くわ」
「一緒に?」
どこへ、とは問わない。おれは何処へも逃げられないし、逃げても終われない。目的地はただひとつだった。少女はさもあたり前だという風に首肯した。
俺の前を歩き始めたルーシーにつられるように、もつれる足を引きずって歩き出す。
「ルーシー」
「リュシーだってば」
「リー、シィ」
「リュシー!」
「ルー……もういいだろ。お前はルーシーだ」
ルーシーは俺の指を強く握ることで抗議をしたが、如何せん、少女の力は羽毛ほどのダメージも感じない。冷たく、力弱い指だった。
それ以後、俺は最後の日までルーシーをルーシーと呼んだ。
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