不死の通信兵と次代の魔女

4/47
前へ
/47ページ
次へ
 コーコント街道で死んではいけない。  それはこの大陸では赤子から老人まで知っている事実だ。コーコント街道で死ぬと、魔女がその魂を喰らって、天には昇れないらしい。  昔々、この大陸に生まれた原初の魔法使いコーコントは、そのたぐいまれな魔力を用いて大陸の端から端へと長大な道を創った。何を目的としたのかは誰もしらない。けれどもその道は大陸を、国と国を繋ぐ道として整備され、コーコント街道と名付けられた。人々はそこを行き来し、資源を分け合い、そしてそれを奪い合って戦った。コーコント街道は何千年もそこに存在し、幾千万の血を吸ってこれからもただ在り続ける。   「見られているわ」 「そりゃぁ見るさ。お前、俺らの格好が客観的に見てマトモだと思うのか?」 「知らない。おかしいの?」  朝日が昇りきり、コーコント街道の本筋を歩く俺たちを、旅人や行商人たちが不審な目でちらちらと見ている。旅装でもなく、真っ黒のワンピースを着た少女だけでも目立つのに、隣を歩くのは軍服の前面を血塗れにした中年、つまり俺だ。     
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加