不死の通信兵と次代の魔女

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「そりゃそうだ。なぁ、寒いとか暑いって、わかるか?」 「知ってるけど……わからない」  耳元で、ルーシーの僅かに困惑した声。なるほど、と俺はようやく少しだけ理解した。知っているけどわからない。それはつまり、身体を持って経験したことがないということだ。  突然表れたケネシアに似ているルーシー。俺の死を見ても動じない、俺も彼女の存在を疑問にも感じない。  ――ルーシーは、次代の魔女だ。  コーコント街道をただひたすら歩かされたこの八年。  ――終わり(・・・)が来るのだ。  そう気がつき、ルーシーの体温で温かな背中にぞわりと痺れが走った。それは歓喜にも似ていた。 「ルーシー、旅をするには相応しい格好ってのがある。それを揃えるには金が必要だ」 「そうね?」 「だが、俺が死んでいるあいだに俺の金を盗んだ奴がいる」  ルーシーは返事もせず、じっと目を閉じていた。俺が死んでいる間に金や荷物を盗まれるのはいつものことだが、ルーシーが同行するとなると話は別だ。肩口を振り返ると、ルーシーは音がしそうなほど長い睫毛を持ち上げて、その割れたガラスの瞳を得意げに俺にむけて微笑んだ。 「このまま北へ二リグ程。盗人の名前はクリム・バスタル」 「流石」     
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