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太陽は、頭の真上にある。夢を見るには未だ早過ぎるし、ゴーストにしては俺たちは存在感がありすぎると思うのだが。
「おいガキ、聞いてるか? 金返せ」
コートント街道側道からから北へ二リグの距離にある街ヘダール。
ヘダールの小さな商店街は、異様な雰囲気に包まれていた。朝の「仕事」から戻ったクリム・バスタルは、朝食をたらふく食べ、家路につこうとしていた、のだろう。
申し訳ないが、悪夢はお前の前に立っている。
「大丈夫か? 言葉わかる? ルーシー、俺まだ硬直してるか?」
「舌より脳味噌が固まっているんじゃないかしら」
俺の血塗れのシャツを目が乾くんじゃないかと心配になるほど見つめた少年は、ぱくぱくと口を開いて閉じて、ようやく言葉をひりだした。やせ細ってぼろを纏った、この世界にありふれた貧民のガキは、聞き飽きた陳腐な言葉で尋ねる。
「あ、あんた、今朝、死んでた」
「俺の金、おまえ、持ってる。俺に、返す。おーけー?」
そう、たしかに俺は死んでいた。喉を裂かれ、そこから下、パンツまでぐっしょり血塗れという状態で。
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