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俺の女は、めっぽう酒が強い。
この一文で最も気になるところに、線を引きましょう。
授業の終わりに、俺はふざけてこんな文を板書きして、学生たちに問うてみた。みんな「は?」って顔をして、俺を見ている。
特に答えはない。気まぐれで出しただけ。もう残り時間少ないから余興だ。
「『めっぽう』ですかね、使い方が間違っているとか」
真面目な顔して、木崎が眼鏡を上げて答える。いや、合ってるだろ。
「『女は』なのか、『酒が』なのか、主語が曖昧!」
なるほど、「俺の女は強い」にね。なんねーよ、大野。「酒が強い」は形容詞的扱いだろ。ある意味では、確かにあいつは強いが。
「『俺の女』がそもそもいない!」
山川、てめぇ、そこか! 正解だよ。
6限終業のチャイムが鳴ったので、じゃあな、と手を振って教室を出る。
なんだ、答えは何なんだという声が聞こえるが、あまり気にせんでくれ。
さ、これから電車に揺られて、その女とバーで待ち合わせだ。
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