第十二章 その名は、「CHAOS」

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最初に動いたのは、ローガンだった。 目で動きを追う間もなく、ミヤビのすぐ横に移動する。 「・・・ッ!?」 ミヤビは一瞬の出来事に、言葉にならない声を上げる。 「よく聞け、ウラガ。お前も気付いているだろうが、この試合には うちの学園ならざるものが紛れ込んでいる。」 ローガンは、ミヤビにのみ聞こえるように耳元で言葉をかける。 「・・・。」 ミヤビは警戒態勢のまま押し黙る。 「・・・これは、おそらくだが。最近流行っている賊の一員だと思う。」 ローガンは鋭い眼光でミヤビを見つめる。 「・・・賊?」 ミヤビはなおも警戒態勢のまま、聞き返す。 「あぁ、賊だ。・・・その名はCHAOS。俺はその正体を暴く。 頼む。この試合、俺に譲ってくれ。」 ローガンはそこまで言い終えると、攻撃は加えずに後方へ飛び退いた。 「・・・。CHAOS・・・。」 ミヤビはしばらく考えていたが、おもむろに歩を進める。 「ん?んんんんん!?お、おいおい。どうしたんだよミヤビ!」 ミヤビの行動にジンが手すりを力強く握りながら立ち上がる。 さすがの俺にもその行動は良く理解出来なかった。 『し・・・、試合終了です!!!ミヤビ・ウラガ選手棄権により、 ローガン・ハセット選手の勝利です!』 試合はローガンの不戦勝で終わった。 魔導大会2日目も最終試合の第8試合が始まった。 ミヤビの試合以降、俺の周りの人間達は活気が無かった。 特に、ジンにいたってはあの試合終了後にどこかへ行ってしまった。 それ程までに、ミヤビの出ていた試合の結果には誰もが納得いっていなかったようだ。 俺は、そんな中、気になっている事を確かめるべくミヤビを探していた。 (あの試合中、おそらく何かを言われていたはずだ。) そう、ローガンの耳打ちに俺は気付いていた。 あの耳打ちの後の、ミヤビの突然の棄権。 何かしら重大な話だったに違いないはずなのだ。 その内容が何だったのか、ミヤビに直接聞いたほうが早いと踏んだんだが。 当のミヤビすらも姿が見えない。 選手控え室に顔を出してみたが、ミヤビはおろかローガンもいない。 一体、何処にいるんだ。俺は首をかしげながら、場内出口に向かった。
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