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「よう、アルト。迷惑掛けたな。ごめん。」
不意に声を掛けられ、そちらに目を向けると、罰が割るそうに頬をかきながらジンが立っていた。
「いや、構わないさ。親友の意を決した戦いだからな。
手を貸さないわけには行かないだろ?親友として。」
俺は、そんなジンに握りこぶしを作り、親指を立てる。
ジンはそれを見て、「へへ。」っと笑うと、俺のこぶしに自分のこぶしをぶつけてきた。
「よっし!帰りますかー!今日は疲れたからな!」
そういうとジンは踵を返し、クラスから出て行く。
俺はその後姿を見守った。
っと、クラスの入り口付近にティルナを見つけたので、俺も向かう。
「さて、帰ろうか。」
俺は、ティルナの頭をポンっと優しく叩くと、ティルナと共にクラスを後にする。
「ねぇ、シノン。帰る前にちょっとだけ寄り道しない?」
前を歩くティルナが急に後ろの俺に振りむいてきた。
「ん?寄り道?なんか買い物とかか?」
寄り道といえば、その類だろう。
「まぁ、そんなとこかな。」
何だろう。ティルナが凄いわくわくしているような感覚を振りまいている。
「・・・。まぁ別に構わないが。あ、でも俺にはそんなお金ないぞ?」
そう、俺はこの世界に来てからと言うもの、自分でこの世界のお金を持ったことが無い。
ガイアーム時代は、騎士団としての給料が支給されていたため、お金には困らなかったが、こちらの世界ではそれが無い。
「あ、そこは大丈夫!おかあさんに貰ってきたから!私の分とシノンの分!」
ティルナはルンルンで俺に笑顔を振りまく。
・・・。恐らくだ。もしガイアーム時代にティルナと会っていたら。俺は間違いなくティルナに恋をするだろう・・・。
と、思考が暴走したが、わざわざ俺の分もくれるなんて。
ちゃんと、恩返しはしないとな。
俺たちはそんな会話をしているうちに、学校を出て、王都シンクギアに差し掛かっていた。
「シノン!こっちこっち!」
シンクギアに入ってから、ティルナは俺を誘導するかのように、街の中へと進んでいく。そんな中、俺はティルナに手を引かれ付いていくのが精一杯だった。
っと、ある程度進んだところでティルナの足が止まる。
「さ、着いたよ!入ろう!」
・・・ってお前。ここは・・・、酒場じゃないか。
俺は目の前の建物に表示された看板を見て、ティルナの腕を掴む。
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