第十一章 暴走

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「よう、アルト。迷惑掛けたな。ごめん。」 不意に声を掛けられ、そちらに目を向けると、罰が割るそうに頬をかきながらジンが立っていた。 「いや、構わないさ。親友の意を決した戦いだからな。 手を貸さないわけには行かないだろ?親友として。」 俺は、そんなジンに握りこぶしを作り、親指を立てる。 ジンはそれを見て、「へへ。」っと笑うと、俺のこぶしに自分のこぶしをぶつけてきた。 「よっし!帰りますかー!今日は疲れたからな!」 そういうとジンは踵を返し、クラスから出て行く。 俺はその後姿を見守った。 っと、クラスの入り口付近にティルナを見つけたので、俺も向かう。 「さて、帰ろうか。」 俺は、ティルナの頭をポンっと優しく叩くと、ティルナと共にクラスを後にする。 「ねぇ、シノン。帰る前にちょっとだけ寄り道しない?」 前を歩くティルナが急に後ろの俺に振りむいてきた。 「ん?寄り道?なんか買い物とかか?」 寄り道といえば、その類だろう。 「まぁ、そんなとこかな。」 何だろう。ティルナが凄いわくわくしているような感覚を振りまいている。 「・・・。まぁ別に構わないが。あ、でも俺にはそんなお金ないぞ?」 そう、俺はこの世界に来てからと言うもの、自分でこの世界のお金を持ったことが無い。 ガイアーム時代は、騎士団としての給料が支給されていたため、お金には困らなかったが、こちらの世界ではそれが無い。 「あ、そこは大丈夫!おかあさんに貰ってきたから!私の分とシノンの分!」 ティルナはルンルンで俺に笑顔を振りまく。 ・・・。恐らくだ。もしガイアーム時代にティルナと会っていたら。俺は間違いなくティルナに恋をするだろう・・・。 と、思考が暴走したが、わざわざ俺の分もくれるなんて。 ちゃんと、恩返しはしないとな。 俺たちはそんな会話をしているうちに、学校を出て、王都シンクギアに差し掛かっていた。 「シノン!こっちこっち!」 シンクギアに入ってから、ティルナは俺を誘導するかのように、街の中へと進んでいく。そんな中、俺はティルナに手を引かれ付いていくのが精一杯だった。 っと、ある程度進んだところでティルナの足が止まる。 「さ、着いたよ!入ろう!」 ・・・ってお前。ここは・・・、酒場じゃないか。 俺は目の前の建物に表示された看板を見て、ティルナの腕を掴む。
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