第十一章 暴走

9/9

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
俺とティルナは、店の奥にある階段から2階へと上がる。 そう言えば、カウンター席に1人だけ客がいたけど、昼間はそんなに人も来ないのか。 最期の階段を上りきると、 「おー!お二人さん!待ってたぜぇ!!」 この声は、ジン!? それに、先に帰ったはずのフィア。 さらには、ジルやオルガ、エルルまで、いつものメンバーが勢ぞろいしていた。 「遅いっすよ、アルト先輩!」 オルガがそういいながら、席に案内してくれた。 しかし、コレは一体なんなのだろうか。 見た限りでは、テーブルには豪華な食事。飲み物が用意されている。 誰かの誕生日、もしくは何かの記念日かと思わせるような雰囲気を醸し出している。 「よし、じゃぁ全員揃ったし、やるか!?」 ジンは、飲み物の入ったグラスを持ち、高く持ち上げる。 それを見たその場の全員が、同じ行動を取る。 俺も慌てながら、目の前のグラスを取り、胸の高さまで持ってくる。 「それじゃ、魔導大会、初日終了お疲れ様&予選突破オメデトウの カンパーーイ!!!!」 ジンの景気の良い掛け声と共に、その場にいた全員のグラスがぶつかり合う。 一同「カンパーイ!!!」 どうやら、今日の魔導大会の打ち上げだったようだ。 それにしても、まだ初日が終わっただけだってのに浮かれすぎじゃないか? 俺は、バカ騒ぎをする皆を見て、苦笑を浮かべる。 「気が早いんじゃねぇかって思ってんだろ?」 不意に、肩を組まれ俺にだけ聞こえるトーンで、ジンが呟く。 「・・・。ま、まぁ。」 俺は、気がきく回答も用意できず、そのままの意思を伝える。 「まぁ、そう思うのも無理はねぇさ。なんたって、まだ初日だしな。 でもよ、この初日でこの面子には、それぞれ感じたものがあったんじゃねーかな。 もちろん、俺とフィアは、この先の戦いも勝ちに行くつもりだ。 ただ、今日は俺てきに・・・、皆とこうやって楽しくやりたかった。」 ジンは、グラスの中身を覗きこみ、深く見入る。 「・・・。そうだ、アルト・・・。あん時はすまなかったな。 俺の勝っ手で皆を危険な目に合わせちまった。」 ジンはグラスから、目の前で騒いでいるみんなの方を見つめる。 「・・・。確かにな。でも、本来のジンになれたんだ。 皆も許してくれるだろうさ。何よりあの笑顔がその証拠・・・。だろ?」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加