第十二章 その名は、「CHAOS」

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杖を構える女子生徒は、視界を砂埃に奪われミヤビの姿を捉えられずにいた。 それを好機と判断した、もう一人の生徒が、大きな鎌を振り上げ女子生徒への間合いを詰めていた。 「油断は禁物だぜ!敵は炎女だけじゃねぇってのッ!!!」 大鎌の間合いに捉えた瞬間に鎌を振り下ろそうとした時だった。 丁度、この二人の真横に立ち上がっていた砂埃が吹き飛び、すさまじい熱量の赤い波動が姿を現す。 「「なっ!!!」」 二人は声をそろえて驚愕する。と、同時に一気に場外へと吹き飛ばされる。 波動はそのまま防御壁に衝突すると、激しい音と共にその姿を消した。 「残りは一人・・・。」 二人を場外へと吹き飛ばした方を見つめながら、低い体勢からスッと立ち上がる。 ミヤビは、足元から伝う冷気を感じ取っていた。 「・・・。」 ミヤビはゆっくりと振り返る。 そこには、左手に水魔法で造られた剣。右手に氷で造形された剣を持った男子生徒が立っていた。 「まじか。あいつと同じ試合なのか。厄介なヤツと当たったな。」 ジンがボソッと呟く。 確かに、見た限りでは属性相性自体もミヤビの方が不利に近い。 「あれって、まさかローガン?」 フィアが呟くと、 「そのまさかだよ。こんなにはやく当たるとはな。」 ジンはフィアに対して、言葉だけで返す。 「・・・まさか、こんなに早く大魔導に近い存在の対決になるなんて。」 また、大魔導クラスの生徒か。 一体この学校には何人の大魔導候補生がいるんだ。 まぁ、それはさておき、あのローガンとか言う生徒。 恐ろしいくらいの魔力量を秘めてそうだな。ミヤビ・・・大丈夫か。 「この戦いはかなりの魔力量のぶつかり合いになるかも知れないね。」 エバンが隣で不適な笑みを浮かべている。 俺もグラウンドへと視線を戻す。 未だ、両者は動きを見せずに対峙している。 グラウンドのローガン側は、冷気からか白い煙が立ち込めている。 はたまたその逆側のミヤビ側は、熱気からか、蒸気が立ち上っている。 お互いに目線を逸らさずに睨みあったまま立ち尽くしている。 いや。立ち尽くしているわけではない。無意味に動けばその分、相手に先手を奪われ好機を逃すのだ。 お互いに無言の威圧が競り合っている。
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