雨の鎮魂歌

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雨の鎮魂歌

タイトル:雨の鎮魂歌(あめのレクイエム) 書いた人:甘らかん(かんらかん 梅雨どきは頭痛)  霧雨のカーテン。  紫陽花の花びらを帽子にして雨蛙の歌姫が民衆の前に現れた。  鳴り止まないケロケロ大合唱。青緑のロングドレスを身に纏う歌姫は頭の花びらを手のひらに乗せて優しく息を吹きかける。命を与えらた紫色は歌姫の手を離れ、群衆の真上を踊るように舞いはじめる。  後ろ足が生えはじめたオタマちゃんが花びらを追いかけようと池から出ようとするのをお母さんがたしなめる。 「前足がでたらね」  頭を水面半分出してプクプク泡を出すオタマちゃん。  雨蛙たちのざわめきが止んで、紫陽花の葉に溜まった雫がリズムをとりはじめる。  さぁ、ショーのはじまりだ。  ステージは紫陽花の緑の葉。ピンクと水色が合わさった紫陽花の大輪を背に雨蛙の歌姫が天からの恵みで湿り気を得るこの季節を讃える。  さあ、みんなも一緒に。  雨蛙たちは肩を組んで喜びを分かち合う。  もっと湿り気を。力が溢れてくるよ。オタマたちも跳ね回っている。後ろ足、前足、尻尾もじきに引っ込むよ。     
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