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このとき、蛇はみじめなウシガエルとごちそうである歌姫を目の前にして天から槍が降ってくることに気づけなかった。
「グエエッ!」
槍が降ってきた。二股の木でできた槍だ。
それが蛇の首を地面に叩きつけた。泥に顎を打ち付ける蛇の苦渋。息を飲む雨蛙たち。へたり込む歌姫。なんとか立っているウシガエル。
「これはデカイぞ」
天から降り注ぐ声は神か、いや違う。
「ウシガエルの声につられて来てみれば」
「すごいのがいたもんだな、おい」
人間の男性がふたり、蛇の首根っこと尻尾をつかんで持ち上げた。蛇は湧き上がる雷雲のようにうねる。
「俺様は白蛇に、神になるんだっ」
必死に首を歌姫に向けようとする気迫。人間の力でも抑えるのは至難の技。
「なんて力だこいつ」
「手を離すなよ、噛まれるな」
そこからは人間と大蛇の戦い。人間ふたりですらやっとの大物。ここにいる雨蛙など一口でみんな飲まれていただろう。
やがて、静寂が訪れる。
「ウシガエルくんがいなかったら……」
人間が来たのはウシガエルが何度も何度も威嚇をしてくれたから。必死に叫んでくれたから。
「ウシガエルくん……」
「ウシガエルくん……」
危険が去り、逃げ隠れしていた雨蛙たちがじょじょに姿を現した。
どっしり構えて歌姫を守るポーズを崩さないウシガエル。
「ウシガエルさん」
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