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息が荒くなっているウシガエルの目は半分だけどまだ開いている。
「明るくて楽しい歌が聞きたい」
体まで起こそうとするウシガエルにお医者さんと助手たちが総がかりで押さえつける。それでもウシガエルの目はかすかに開いている。歌姫をまっすぐ見つめている。
「ウシガエルさん」
「せっかくのお祭りじゃないか、歌ってくれよ」
霧のような雨に音をつけるとしたらどんな音だろう。ウシガエルの鼓動はどんなリズムを刻んでいるのだろう。今日を生き延びることができた歌姫は、どんなメロディーを。
歌姫はウシガエルのそばへ寄った。うなずく歌姫の瞳に迷いはみられない。
「すてきな雨の日ですもの。楽しくすごさなきゃ嘘ですよね」
歌姫はそっとウシガエルのほっぺにキスをして、颯爽と紫陽花のステージに向かう。祭りの再開に心躍らせる雨蛙たちがステージに集まってきた。
さあ、歌いましょう! 天からの恵みに感謝して!
歌姫の合図で雨蛙たちは体を寄せ合い、リズムをとりはじめる。
なんて素敵なシーズン。天の恵みありがとう。ぼくらの世界ありがとう。ケロケロ、ケロケロ!
オタマちゃんも池で跳ねるよ。ケロケロケロケロ!
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