弱者

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それから、五回の秋が過ぎた。その間は、随分裕福な生活を送っていた。ちゃんとした量の食事を三食摂れたし、冬になっても、凍える程の寒さを味わう前に布団を掛けてくれた。退屈になったら、村の女性が必ず一人はいるので、その人と遊べた。だが必ず、お母さんではなかった。無論、姉妹とも遊ばなかった。 流石に五年も同じ家にいるのは退屈なので、次に遊びに来た女性に、いつ出れるか尋ねようと思ったが、その女性が、「アカちゃん、こっちに来て」と、息を切らしながら手招きした。 その女性は私を長老の屋敷に連れていった。戸を開けると、 「…そこにいるのはアカか」 「そうです」 「わかった…では、そこに座ってくれ」長老が指差した場所に腰を下ろした。しばらく間を開けた後、長老が慎重に話し出した。 「アカよ、一週間前から呪術師が占いを続けていたが、このままでは来年は雨が降らず、この村は全滅してしまうらしい…何が言いたいか、分かるか?」 「…」私は無言で頷いた。 「…なら、よろしい」それだけ言うと、長老は奥へ去っていった。 それから三日後、私の元に三人の女性が入ってきた。五年前同様、豪華な服に、首輪と耳飾りを身につけた。その他に、 「じっとしてて」と言った女性が、何かを私の頬やら額やら鼻やらに塗った。更に、草の冠を被せられた。ちゃんとおめかしできたので何よりだった。 外に出ると、既に日は落ちていた。そして、無数の小さな松明が、一際大きな二本の松明と神に供える猪を照らしていた。近くには、川が流れていた。 「神よ、我らにもう一度恵みを!」猪を正面に祈祷師がこう叫んでた。周りに顔は出さないが、毎年私の家の近くで祈りを捧げていたので分かる、この叫びで祈りは終わる。だが、今年は違う。 川沿いで行っていたので、察した大人もいるだろう、私もまとめて神に供えられる。その為に私は、川に身を呈する。さっきの化粧や装飾なんて、気休めにしかならない。それに、私はこの五年間で覚悟を決めた。なので、この世界に悔いはない、鮮やかに飛び込んでやろう。
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