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「それでは、検察官、立証をお願いします」
「分かりました。まずは、暴行開始の年月について、貴方は八年前に灯里ちゃんを殴り始めましたか?」
「…はい」ボソッと呟いた。
「次に、被告の元に灯里ちゃんが通うようになったのは三年前、彼女が小学校三年生のときですか?」
「…はい、その通りです」今度の声ははっきりと聞こえた。
「灯里ちゃん殺害に使用した包丁ですが、そこから灯里ちゃんの指紋が検出されました。検察としては、灯里ちゃんが料理に使用した包丁だと考えていますが、そうですか?」
「…そうです」
「了解しました。これで、立証を終わります」
「それでは、弁護人からの立証をお願いします」
「私はまず、柚川被告の元妻である久高里香さんの尋問を行います。では、久高さん、どうぞ」中央の台に、彼女が上がった。
「こんにちは。私は明応大学で准教授をしている、久高里香です。柚川被告とは以前、婚姻関係を結んでいました」
「では、久高さんにお尋ねします。検察の見解に、異論はありますか」
「少しあります」
「…では、どう言った点ですか」原稿にはこんなやり取りはないのか、弁護人は動揺を隠せない。
「灯里は、私の知る限りでは、暴行は受けてません。被告と離婚するまでは、必ず」
「それでは、久高さんは柚川被告が何故灯里ちゃんを殺害したと思いますか」
「…子どもに八つ当たりしてしまうぐらい、ストレスが溜まっていたのではないでしょうか」その声に自信はなさそうだった。
「…では最後にしてもいいですか」狼狽えている弁護人が、無理矢理尋問を終わらせようとした。
「はい」
「何か裁判官に訴えたいことがあれば、おっしゃってください」
「もし仮に、被告に真っ当な理由があったとしても犯罪は犯罪です。世論と被告の双方が納得できる判決をお願いします」
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