嫉妬

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   家までの道、気まずい沈黙のもと典夫と知矢は肩を並べて歩いていた。  不意に知矢が口を開いた。 「お兄ちゃん、さっきの……見てたの?」 「……ああ。のぞき見するつもりはなかったんだけど。声が聞こえてきたから、悪い」 「そんなことはいいんだけど……、お兄ちゃん、あの――」 「おまえ、もてるんだな。結構かわいい子だったじゃないか」  幾人もの好きでもない女性と付き合ううちに、いつの間にかうまくなってしまった作り笑顔とともに典夫は明るく、弟へ言った。
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