仲直り

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仲直り

 泣き疲れていつの間にか眠っていたようで、ノックの音で起こされた。 「……はい」  目元の涙を拭き返事をすると、ドアが開けられ典夫が顔をのぞかせた。 「お風呂、あいたぞ」  典夫はタオルで少し茶色がかった髪を拭っている。 「……うん……」  知矢はベッドから降りるとクローゼットからパジャマを取り出し、部屋を出る。  すれ違いざまに典夫が言った。 「さっきはごめんな……」  やさしく頭を撫でてくれるような声。知矢が大好きな。 「ううん。僕のほうこそ蹴っ飛ばしてごめん……」 「あれは痛かったぞ」  兄が微笑む。  整い過ぎていて、少し冷たさを感じさせる美貌が和らぐ瞬間の笑顔。  胸がときめく。  どんなにケンカをしても、最後はこうしてやさしく笑ってくれる。  そんなお兄ちゃんがやっぱり大好き……。  さっきの涙とは違う切なさと甘さが混ざった涙が込み上げてきて、知矢は慌ててお風呂に向かった。
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