お兄ちゃんを思って……

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お兄ちゃんを思って……

 お風呂で髪を洗い終えた知矢は横にかかっている鏡に自分の顔を映した。  なんとも頼りなげな女の子のような顔が映し出されている。  知矢と典夫は顔や体つきはまったく似てない兄弟だ。  お兄ちゃんはクールビューティーという形容がぴったり当てはまる美貌の持ち主だけど、僕はなんだかちんちくりんというか……。  それでも、と知矢は洗ったばかりの髪に触れながら思う。  髪質だけはとてもよく似てるんだよね。  お母さん譲りの少し茶色がかった真っ直ぐな髪。  だから知矢は自分の髪だけは大好きだ。  目を閉じて自分の髪に触れていると、兄の髪に触れているような気持ちになってくる。
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