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考えれば考えるほど気持ちは乱れ、ざわめく。
今はまだ甘えん坊で、オレにくっついてばかりいるけれども、あいつも少しずつ大人になって兄離れしてしまう日が必ずやって来る。
怖い夢を見たから、怖い動画を見たから、と言ってオレの隣にもぐり込んでくることもなくなってしまうだろう。
自分でも矛盾していると思う。
知矢に兄離れしろと言っておきながら、知矢がオレから離れて行くことを恐れてもいる。
でも本当の本音は、兄離れなど永久にして欲しくない。
いつまでもオレの傍に置いておきたい。
知矢が女と付き合うなんて、想像するだけで嫉妬で変になりそうだ。
あいつが他の誰かのものになってしまうのなら、それくらいなら、いっそオレがあいつを……。
そこまで考えて、典夫はハッと我に返った。
「だめだ。オレはなにを考えてるんだ? そんなことしたら知矢をひどく傷つけるだけじゃないか」
兄弟という事実はあまりにも重い枷である。
とても近くにいるのに決して触れてはいけない、愛しい人。
思わず頭を抱えて悩み苦しんでいると、上から明るい声が降ってきた。
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