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大好きなお兄ちゃん
やだな……。
なんだか天井の模様が人の顔に見える。
知矢は自室のベッドで眠れずにいた。
時刻は午前一時五十八分。ちょうど丑三つ時だ。
……ああ、やっぱりネットの心霊動画なんか見なきゃよかった。
数時間前に見たこわーい動画が知矢の不眠の原因だ。
「ああ、やっぱり怖くて眠れない。お兄ちゃんのとこへ行こう」
知矢はベッドから出ると、枕だけを抱えて、隣室の典夫の部屋をノックした。
「はい」
典夫はまだ眠っていなかったようで、すぐに返事が返ってくる。
「おにーちゃーん」
そろそろと扉を開けると、典夫はベッドで半身を起こして小説を読んでいた。
「なんだ? また怖い夢でも見たのか? 知矢」
知矢を見ると、典夫は端整な顔に呆れの色を浮かべて、そんなふうに言った。
「怖い動画見ちゃって、眠れない。隣に入れて、お兄ちゃん」
今夜のように怖い動画を見たり、怖い夢を見たりして眠れなくなったとき、知矢はいつも大好きな兄のベッドに入れてもらうのだ。
典夫の隣で彼に抱きついて眠ると、怖いものはなにもなくなり安眠できる。
「……あのな、知矢。おまえももう高校生なんだから、いつまでもオレにばっか頼んなよ」
なのに、典夫は知矢を突き放すように言い放った。
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