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「えっ……?」
知矢はショックを受けた。
今までの典夫なら呆れながらも、すぐに隣に入れてくれたのに……。
「どうして? お兄ちゃん、なんで急にそんなこと言うの?」
「急じゃない。前から思ってたことだよ。いい加減、兄離れしろ」
「……なに? それ」
ショックと、急にそんなことを言い出した兄への腹立たしさに、知矢は半泣きになる。
「分かった。もういい!」
涙声で言い、すごすごと典夫の部屋を出て行こうとしたとき、小さな声が知矢を呼んだ。
振り返ると、典夫が毛布を少しめくり、
「…………眠れないんだろ? 入れよ」
しかたないなという表情をしながらも、そう言ってくれた。
知矢の気持ちは一気に浮上した。
やっぱりやさしい! お兄ちゃん。
「ありがとー。お兄ちゃん」
そう言うと、枕を抱えたまま典夫の隣にもぐり込む。
知矢がもぐり込んだ途端、典夫は寝返りを打って反対側を向いてしまったので、兄の背中に抱きついた。
こうしてくっついているとすごく安心できるのだ。
典夫は大学二年生、知矢は高校一年生。
四つしか違わないのに、知矢の貧弱な体と違い、典夫の体は程よく筋肉がついていて、とても頼りがいがある。
身長も知矢は百七十に届く前にとまってしまっているが、典夫は百八十センチ、スラリとスリムなモデル体型だ。
お兄ちゃん……大好き。
心地の良い睡魔に呑み込まれながら、知矢は小さく呟いた。
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