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翌朝、知矢が目を覚ましたとき、典夫はまだ眠っていた。
眠りについたときは向こうを向いていた兄は、いつの間にか知矢のほうを向いている。
知矢は兄の端整な顔をじっくりと見つめた。
お兄ちゃんって、本当にかっこよくて綺麗な顔してるな。
切れ長の目もすっきりと高い鼻も少し薄めの唇も、もう完璧な美貌の持ち主……。
女の人にもすごくもてて。
知矢の胸が痛んだ。
僕はこんなにお兄ちゃんが好きなのに。
お兄ちゃんのことだけが好きなのに。
お兄ちゃんは違う。
いつ頃からだっただろう?
……多分、お兄ちゃんが中学生になった頃くらいからだと思う。
お兄ちゃんが女の人といっしょにいるところを時々見かけるようになったのは……。
分かってる。
お兄ちゃんが普通なんだってことは。
僕のほうがおかしいんだ。実の兄に恋をしているなんて……。
でも、それでも、お兄ちゃんが好きなんだもん。
叶わない思いでも……とめられない。
典夫の寝顔を見つめながら、知矢は声を殺して泣いた……。
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