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歩きながら典夫は思う。
分かってたことなのに。結局こうなることは。
どんな女の子とつき合ったって決して満たされることはない。
典夫は今まで何人かの女の子とつき合ったが、どの子とも一か月もったことはない。
典夫が好きなのは、狂おしいほどの恋情を抱いているのは、実の弟、知矢なのだから。
でもこれは許されない想い。
なのに、あいつは、知矢は、無邪気にオレに甘えてくる。
大きな瞳でオレを見つめてきて、小さな唇でオレを呼び、華奢な体で抱きついてくる。
昨夜、知矢が抱きついてきたときの感覚が蘇った。
甘い香り、暖かな体温……。
オレはクモの糸のような理性を繋ぎとめて、あいつに襲い掛かってしまいそうな自分を抑えなきゃならなかった。
「マジおんなじベッドで眠るのはやめにしなきゃ、いけないな」
いつもそう思うのだが、すがるような知矢の瞳や、半泣きになっているところを見ると、つい甘やかしたくなってしまう。
突き放せ切れない。あきらめきれない。
……どうして、オレたちは兄弟なんだろう?
せめて血の繋がりがなければ、思いを告げることができたかもしれないのに……。
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