3章 橙色の友情

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富士山の麓はさすがに富士山が大きく見える。おおーと歓声をあげると、レミとロピも目を輝かして富士山を見上げる。 「富士山の麓って、動物たくさんいるらしいよ!」 二匹に話しかければ、二匹ともあたしの話に耳を傾ける。 「昔ね。ここに動物たちがいっぱい見られるテーマパークがあったんだって。今は廃業されているけど、そのときに何匹もの動物が逃げて、繁殖したって話。いっぱい仲間ほしいね!」 そう言うと、二匹は頷いてくれた。やっぱり、あたしは動物と関わっていた方が気が楽だ。癒しに近いものを感じる。 「お前、どこいくんだ? 置いていくぞ!!」 お兄ちゃんが手招きする。真澄とはあれから必要なことしか話さなくなった。お兄ちゃんの彼女になった真澄。それだけで少し遠い存在に思える。 あたしは二人に気を遣って稔彦の隣を歩いた。 「いい写真撮れそう?」 「どうだかなぁ。まあ、心のアンテナは立ててるよ」 稔彦はそう言って、首にぶら下げているカメラを持ち上げた。真澄がこちらを気にしているように感じるけど、どう声をかけて良いかわからず、そのままにしてしまう。 と。遠くのほうから声がした。なんだろ? 動物の声かな? 「あたしちょっと行ってくる! 行こう。二人とも!」 レミとロピを連れて走る。 「待てよ! ここ、危険……」 遠くでお兄ちゃんが呼び止めてきたけど、動物らしき声の方が気になった。走っていけば、動物の声が近づいてくる。 あっという間に声が聴こえる場所についた。あれ、でも誰もいない? そう思っていると、目の前にある崖から声が聞こえた。おそるおそる近づいて、崖から顔を出す。すると、崖から生えた枝を必死に掴んでいる今にも落ちそうなライオンの赤ちゃんがいた。生後どのくらい? ライオンについては全く知識がないから全然わからない。 辺りを見回しても、この子のお父さんお母さんは見当たらない。手を伸ばそうにもギリギリ届かないくらいだった。崖の下は30~40メートルくらいある。 「レミ、助けられそう?」 ここはレミの念力で助けるしかない。レミは集中して、ライオンの赤ちゃんを持ち上げていった。 あたしもロピも見守るしかなく、ただ息を潜めていた。
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