3章 橙色の友情

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「おーい!! 蓮華ー!!」 思わぬところで声が聞こえた。レミが驚いて、念力を解いてしまった。ライオンの赤ちゃんが落ちていく。思わず崖に飛び込んで、ライオンの赤ちゃんを抱き締めた。どんどん下に落ちていく。地面が迫ってきて思わず目をつぶると、ぶつからずに浮いている感覚に襲われた。 服を掴まれている。ロピだ。ロピが咄嗟に助けてくれたのだ。ただ、人とライオンを崖の上まで運ぶ力は持ち合わせておらず、地面にゆっくりと降りる。あたしはホッと息をついた。 「ロピ、ありがとう」 「ミィ!」 頭を撫でてやると、ロピは気持ち良さそうにした。 「崖は登れないよね……」 うーんと考えて、バッグから地図を出す。全然わからない。携帯も圏外だし……。とりあえず、崖沿いに歩いたほうがいいかな。あそこの道に戻れば、どこいけば良いかわかるし、合流もしやすい。なだらかなところを見つければ、そこを登れる可能性もある。 「ロピ、あたし引き返すように崖沿い歩くから、レミとお兄ちゃんたちにそれを伝えて崖沿いを案内してもらっていい?」 ロピに伝えると、頷いてくれた。先に進むとややこしいし、道もわからなくなるから、戻ったほうがいい。ロピに一応、レポート用紙を手紙代わりにして渡して、お兄ちゃんたちに渡してもらうようにした。 ロピはそれを受けとると、まずはレミに会いに、落ちた崖を登って行った。 それを見て、あたしはライオンの赤ちゃんを見た。くりっとしたつぶらな瞳は、とてもライオンとは思えない。 「怪我してない?」 「ガー」 「そっか。どうしようか……。こっちにきて、お父さんお母さんに会えるかわからないし……」 考えていると、ライオンの赤ちゃんは崖沿いに歩いていく。 「もしかして、ついてきてくれるの!?」 どうやら助けたお礼に見送ってくれるらしい。ライオンの赤ちゃんは頷いて歩いていく。あたしもそれについていった。 赤ちゃんなのに、もう人間と意志疎通できるんだ。 そういえば、センターにホワイトタイガーの赤ちゃんがいたことがあったけど、その赤ちゃんも意志疎通できた。似てるのかな。 とにかく、合流しないと皆に心配をかける。崖沿いにひたすら歩いていった。
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