3章 橙色の友情

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雨が降ってきた。最初はそこまで激しくなかったけど、急激に天気が崩れた。近くに雨が当たらなそうなところはない。 リュックから、カッパを出した。レミ用のカッパをライオンの赤ちゃんにかけてやると、不思議そうにこちらを見られた。 「風邪引いちゃうといけないから、被ってて。別に、危険なものじゃないから」 にこりと笑って、あたしも同じものを着ているというアピールをするの、ライオンの赤ちゃんは頷いた。どこか雨宿りできるところはないか探すけど、なかなか見つからない。 仕方なく、草が生い茂る大きな木を探して、その下で雨が落ち着くのを待つことにした。当然、完璧に凌げるものでもなく、カッパは脱げない。 きっと向こうも同じような感じかな。この雨じゃあたしを捜すのは断念しているだろう。 レミ、あたしのこと心配してるんだろうな。てか、よく考えたら、お兄ちゃんにめちゃくちゃ怒られそう。ここは危険だから、マスター中級持っている人がいないと通れないって言っていたし。 真澄も稔彦も心配してくれてるのかな。稔彦には、本当に申し訳ないな……。気にしちゃってるかもしれない。 会ったら皆に謝らなきゃ。 ……。 「あっ」 あたしの声にライオンの赤ちゃんがこちらを向いた。頭を撫でてやりながら、あたしは自分が最低なことをしていることに気がついた。 まだ真澄とお兄ちゃんに謝ってない。 とくに真澄には、お兄ちゃんと付き合ったことに対して聞かれて、嫌な態度を取ったままだ。どうしたら良いかわからないじゃなかった。あたしは、謝らなきゃいけなかったんだ。 そして、言わなきゃいけない。複雑な気持ちには変わりないけど、あたしは真澄もお兄ちゃんも応援しているって。少なくとも応援したい気持ちはあるんだって。何が原因で、こんなに嫌なのかわからないって。 素直に話さなきゃいけないんだ。 あたしはライオンの赤ちゃんを抱き締めた。赤ちゃんは頬を舐めてくる。それが、くすぐったい。
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