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雨が降ってきた。最初はそこまで激しくなかったけど、急激に天気が崩れた。近くに雨が当たらなそうなところはない。
リュックから、カッパを出した。レミ用のカッパをライオンの赤ちゃんにかけてやると、不思議そうにこちらを見られた。
「風邪引いちゃうといけないから、被ってて。別に、危険なものじゃないから」
にこりと笑って、あたしも同じものを着ているというアピールをするの、ライオンの赤ちゃんは頷いた。どこか雨宿りできるところはないか探すけど、なかなか見つからない。
仕方なく、草が生い茂る大きな木を探して、その下で雨が落ち着くのを待つことにした。当然、完璧に凌げるものでもなく、カッパは脱げない。
きっと向こうも同じような感じかな。この雨じゃあたしを捜すのは断念しているだろう。
レミ、あたしのこと心配してるんだろうな。てか、よく考えたら、お兄ちゃんにめちゃくちゃ怒られそう。ここは危険だから、マスター中級持っている人がいないと通れないって言っていたし。
真澄も稔彦も心配してくれてるのかな。稔彦には、本当に申し訳ないな……。気にしちゃってるかもしれない。
会ったら皆に謝らなきゃ。
……。
「あっ」
あたしの声にライオンの赤ちゃんがこちらを向いた。頭を撫でてやりながら、あたしは自分が最低なことをしていることに気がついた。
まだ真澄とお兄ちゃんに謝ってない。
とくに真澄には、お兄ちゃんと付き合ったことに対して聞かれて、嫌な態度を取ったままだ。どうしたら良いかわからないじゃなかった。あたしは、謝らなきゃいけなかったんだ。
そして、言わなきゃいけない。複雑な気持ちには変わりないけど、あたしは真澄もお兄ちゃんも応援しているって。少なくとも応援したい気持ちはあるんだって。何が原因で、こんなに嫌なのかわからないって。
素直に話さなきゃいけないんだ。
あたしはライオンの赤ちゃんを抱き締めた。赤ちゃんは頬を舐めてくる。それが、くすぐったい。
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