3章 橙色の友情

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今まで一人になっても、こんな孤独になったことなんてなかった。 独りが当たり前だったし、動物がいるから、人間なんかと仲良くならなくて良いと思っていた。それが至極当然だった。 でもこの一ヶ月半、真澄や稔彦と出会って、こんな短期間なのにあたしの人生は変わった。人間の友達なんてできなかったあたしが、お兄ちゃんのおかげで友達ができた。 たった一ヶ月半なのに、色濃い経験ばかりした。稔彦の優しさに触れて、人間も悪くないと思ったし、真澄の強さに触れて、あたしも強くなりたいと思った。何より、女子に対して、トラウマを持っているのに、あたしは真澄と仲良くなりたいと思っている。 孤独が当たり前だった。今はもう独りの過ごし方がわからない。 3人に感謝しなきゃいけないのに、なんであたしはこうなんだろうか。 真澄に対して、いつまでトラウマを持ってくるのだろうか。向こうはあれだけ向き合ってくれているのに。 どのくらい経ったのかわからないけど、雨が上がった。立ち上がって、再び歩き出す。一人になって初めて、あの3人に感謝しなきゃと思った。感謝してなかったわけじゃない。でも、あたしの態度は感謝している態度じゃない。 一歩踏み出す。人間と関わるのは今でも怖い。もしかしたら、真澄や稔彦、お兄ちゃんにすら呆れられてしまっているかもしれない。それはそれで、自分のせいだ。間違いは認めないと。 そして、もうひとつ。あたしは自分のなかでわかってて、それでも間違いを続けていることがある。 万知の顔が浮かんだ。 万知にはずっと間違いを押し付けている。あの日以来、万知との付き合い方がわからない。真澄と稔彦と友達になれば、少しは考えが変わるかと思っていた。万知と友達に戻れるかもしれないと思っていた。
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