3章 橙色の友情

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万知があれだけあたしのことを考えて行動してくれているのはわかっている。ダイオウカンパニーの件だって、本当は感謝しなくちゃいけないことだ。あたしなんかを推薦してくれてありがとうって言うべきなのだ。 でも、違った。あたしはどうしても、万知と友達に戻れる気がしない。今まで思っていたことだけど、真澄と稔彦と出会って、余計にその思いが強くなった。では、ライバルが良いのかと思ってもみたけど、それも違う。何故だかはわからない。でも、その原因を知るのは怖い。 それでも、あたしは、あのときと向き合うべきだ。 正直、あのときのことは、思い出さないようにしているからか、出来事はうろ覚えだ。記憶がちらつくと、急にブレーキがかかる。きっと気持ちを思い出したくないのだろう。そのときの気持ちもあまり思い出せない。 「ガー!」 ライオンの赤ちゃんが声をあげた。いつのまにか下を向いて歩いていたから気づかなかった。正面になだらかな傾斜がある。そこから、道に戻れそうだ。 「ありがとう! これで皆と合りゅ……」 合流出来ると言いかけたところで、目の前にこちらに警戒した熊が現れた。しかも2頭。黒く、あたしの二倍はあるじゃないかと思うくらい大きな熊だ。 あたしはこの熊に会うまで、すっかり忘れていた。ここは危険な区域。マスター中級の資格を持っている人がいないと入れないこの地域に、パートナーもいないんじゃ助かる見込みはない。 ごくりと息を飲んだ。 熊たちは、ライオンの赤ちゃんをあたしの動物だと思っているのか、赤ちゃんに攻撃しようと腕を振り上げた。咄嗟に赤ちゃんを抱き上げ、攻撃をかわす。熊の腕が地面に食い込む。 これはヤバイ……。 熊の攻撃を上手くかわしながら、後退する。どんどん合流できる道は断たれていく。どうしたら良いか思考させていたからか気づかなかった。大雨で抜かるんだ地面に足を取られ、盛大に尻餅をついた。 「痛っ……」 転けて、立ち上がろうとして気づいた。見上げるとすぐそこに熊の顔がある。熊が腕を振り上げる。さっき、地面に食い込んだ腕だ。怖くなって目をつぶると、 「ガー!!!!」 と大きな声がした。ライオンの赤ちゃんの声だ。その瞬間、熊があたしの上から退いた。というか、吹っ飛ばされたように見える。起き上がって、ライオンの赤ちゃんを見ると、毛を逆立て、バチバチと電気をまとっていた。
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