3章 橙色の友情

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この赤ちゃんの魔法は、電気らしい。雷属性だ。 ライオンの赤ちゃんは、もう一度すごい雄叫びとともに、蒼天を貫く勢いで雷を落とした。赤ちゃんなのに、こんな攻撃力があるなんてすごい。 それでも熊も負けじと、魔法を使い始めた。二匹とも、草属性らしく、周りの木々を揺らし始めた。葉が鋭くナイフのように尖り、こちらに攻撃してきた。雷を出すことも逃げることも叶わず、二人で路頭に迷っていると、物凄いジャンプ力で動物が飛んできた。雷で草が焼ける。 ライオンの赤ちゃんが嬉しそうに、甘えたような声を出す。あたしは一人、場違いなのを感じて息を殺して見守ることしかできなかった。 目の前には雄々しい大きなライオンの姿がある。後ろから、メスのライオンも出てきた。この赤ちゃんのパパとママなのがわかる。 草を燃やしてしまうくらいの雷の持ち主がお父さんなら、さっきの赤ちゃんの強さは頷けた。ライオンパパは吠えることもなく、じっと熊二匹を睨み付ける。やがて熊は勝つことが叶わないと思ったのか、退いていった。 あたしは腰を抜かして、座り込んでしまった。ライオンの赤ちゃんがこちらを見て、あたしの頬を舐める。優しい気持ちになる。ライオンの両親はあたしに近づく。 これ、あたし敵だと思われてんじゃ……。と思ったけど違った。二匹はあたしを見て、頷く。 「お待ちしておりました。だいぶ、時間を掛けられましたね」 「……え?」 いきなりライオンママが喋ったものだから驚いた。ただ、一度同じようなことがあった。ペガサスに会ったときだ。
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