3章 橙色の友情

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傾斜を登って行くと、ハヤタが飛んできた。 「あれ? お兄ちゃんたちは?」 ハヤタが別行動で探してくれていたらしい。ハヤタは、ライを見て、驚いた表情を浮かべた。 「新しく仲間になったの! ライっていうんだ!」 ハヤタは安心したらしく、にこりと笑って飛びながら、お兄ちゃんのところに案内してくれた。お兄ちゃんたちには道になっているところに出たところで再会した。レミとロピがあたしに抱きついてくる。心配かけちゃったな……。 「お前……、そのライオン……」 「さっき助けたライオンの赤ちゃん! 仲間になった!」 そういうと、お兄ちゃんは開いた口が塞がらないといった感じで、驚いていた。真澄と稔彦は、お兄ちゃんの後ろでクスクス笑う。 「相当心配してたのにな」 稔彦にポンと肩を叩かれ、お兄ちゃんは顔を真っ赤にした。 「でも、まさかライオンを仲間にするなんて思わなかったわ」 真澄が笑う。あたしも楽しくなって笑った。 仲間になった経緯を詳しくは話さなかった。ペガサスのことは話したくない。ゆえに、ライの両親が喋った話もするわけにいかない。あの両親は間違いなく、ペガサスと通じているし。 楽しくなりながら、あたしたちは稔彦が行きたいと言っていた絶景スポットにたどり着いた。 「うわぁ」とみんなで歓声を上げた。 夕方に差し掛かって、富士山がオレンジ色に染まっている。富士山の前には湖があり、それだけでも綺麗なのに、湖の周りを囲む水草が雨のあとで雫を光らせ、キラキラと宝石のように輝かせていた。橙色のなかの宝石を片時も見逃せない。 稔彦は何かに取りつかれたようにカメラを、富士山に向けた。誰かが話しかけてもきっと気づかない。それくらい、夢中になっている。カシャカシャと、シャッターを切る音がいつもより多く、それだけ興奮しているのがわかった。
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