3章 橙色の友情

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あたしは夕焼けの富士山を見て思った。こういう景色も誰かと来ないと輝かない。きっと、独りじゃ、感動もないのだと。 「え、蓮華どうしたのよ!?」 「へ?」 「泣いてるわよ?」 真澄の言葉で、初めて気づいた。目を擦ると涙で手が濡れる。 ……あたしはそのまま、真澄の胸に飛び込んだ。 「え、蓮華……。本当にどうしたのよ? トラウマは……」 混乱する真澄を他所に、あたしは真澄を抱き締めた。何やってんのあたし。ぐっと涙をこらえて、真澄から離れる。あたしの異変に気づいて、稔彦もお兄ちゃんもこっちに注目した。 「ごめんなさい!!!!」 あたしは頭を下げ、3人に謝った。3人は驚いた表情で、あたしを見ているのが肌から感じ取れた。 「あたしね。さっき、崖から落ちて、久しぶりに人間がいない世界で過ごしてわかった。もう、あたし、真澄や稔彦が離れていくの嫌なんだって。独りは慣れていたのに、独りの過ごし方もわかっていたのに、みんなと過ごしていくうちに、忘れてたの……」 学校で独りの過ごし方は上手くやっていたつもりだった。でも、違った。あたしはこうやって、人間とも動物とも楽しむことを望んでいたんだ。みんなでこうやって絶景見ながら、感動することを望んでいた。 「でも、あたしの反応はみんなにとって良い反応じゃなかったって思って……。お兄ちゃんと真澄に対して、酷い態度取ったし、とくに真澄は、こんなに向き合ってくれてるのにお兄ちゃんと付き合ってから必要なことしか話さなくて……」 もう一度、3人に頭を下げた。
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