4章 対極の存在

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「ありがとう。絶対に君を守れるくらいに強くなる。だから待ってて」 「え、待つって……」 「君の今思った通りに受け取ってくれていい。それじゃ」 万知の腕がゆっくりと、あたしから離れていく。スローモーションのように動いて、最後に万知の微笑みが見えた。名残惜しい。あたしはぽーっと彼の後ろ姿に見とれる。 真澄にバレてたんだから、多分、万知にもあたしの気持ちがバレてたんだ。万知も同じ気持ちでいてくれていたということだ。あたしは、立っていられなくて、近くのロビーのソファに座った。 こないだあたしが万知を拒否した場所だ。 「マジか……。あたし、万知に本当に酷いことを……」 あたしは自分の気持ちを思い出して3日だけど、万知は違う。ずっと待っていてくれたんだ。胸が痛む。万知は仲直りする日まで、どんな思いでいたんだろう。申し訳ないやら情けないやらで胸がいっぱいだ。 万知が濁した理由は、あたしだ。あたしのことを守るために、濁したに違いない。許嫁がいるのに、恋人同士になったと村に知られたら、一体どうなることか……。 だから、今じゃダメなんだ。 待ってて……って、万知が待たせるんじゃないじゃん。あたしが待たせるんじゃん……。あたしは携帯を開いて、メール画面を立ち上げた。 『あたしも万知を守れるように強くなります。だから、万知も待っててね! 本当にありがとう!』 メールを送信した。 あたしはしばらく動けそうにない。マスターとしても、そして、人間としても強くなると、再度心に誓った。
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