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イタチたちが退いたのを見送ってから、ペガサスは静かにあたしとレミに振り向いた。
毛並みを見る。白い……、いや、純白で何も疑いようのない白色は今までみたことがない。レミだって結構自慢な白い毛並みだけど、そういう白さと違って、パールがかった身体だ。瞳はルビーのように深い紅い色に染まっている。
一目見れば、誰でもハッと息を飲むような、神々しい姿。圧倒される。
それが、何故だかあたしを助けだし、今、目の前にいる。人間は絶対に乗せないペガサスが、人間のあたしを助けた。
『お前をここで死なすわけにはいかない』
そういえば、助けてくれるときにそんなことを言っていた。
「ペガサス……?」
ペガサスは、紅い瞳であたしを見つめてきた。そして、2、3歩近づいてきた。その距離、わずか2メートル。翼が大きくて、実際にはもっと近く感じるけど。
『その表情……、何も聞かされていないようだな』
ペガサスの表情はあまり変わらない。だから、何を考えているのかわからなかった。
「あたしのことを知ってるの?」
『あぁ……。だが、人間はお前に何も教えていない。人間樣は悠長だな』
人間を乗せないということはペガサスは、人間を好きではないんだろうと思っていた。ペガサスの発言からもそれは読み取れる。やっぱり、目の前にいるのはペガサスに違いない。
でも、あたしを助けたのは、あたしが何らかの形で関わっているからだ。何かは全然わからないけど。
「どういうこと? 貴方はあたしの正体を知っているの?」
気になって、ついつい聞くとペガサスはふいっと後ろを向いてしまった。ますます何を考えているかわからない。
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