621人が本棚に入れています
本棚に追加
/877ページ
『本来なら迎えに来るときだ。だが人間がお前を狂わせた。まだ会うべきではないようだ』
何を言われているか少しもわからなかった。圧倒的な存在が、これ以上、あたしを近づけさせないのはわかった。
『人間の心を育てろ。会うのはまたそれからだ』
「人間の心を育てるってどういうこと? あたしの正体を教えてくれないの?」
もしかしたら、神話に何か関係があるんじゃないかと思った。でも、ペガサスは首を横に振る。もうこっちを向いてはくれない。簡単には教えてくれなさそうだ。
『その土台ができていない』
「土台……?」
『それが、人間の心だ。お前はきっと、今、話せば潰れてしまう』
鋭い視線で見られた気がした。ドキリと心臓が跳ねる。
『このことは誰にも話すな。次に会う、そのときまで』
そう言って、ペガサスは天高く飛んでいってしまった。ごくりと息を飲む。何かの形が絡んでいるのはわかったけど、誰にも話しちゃいけないんだ……。
あのペガサスは口を開けて話しているわけじゃなかった。たぶん、思念伝達だ。ということは、普通の動物は魔法が一つだけど、思念伝達と空を飛ぶこととペガサスは二つ持っているってこと?
ますます、神に近い存在なのが感じられる。もしかしたら、他にも魔法ありそう。
「きゅい?」
「うん。戻ろっか」
レミが話しかけてきて、思考が途切れた。あたしは頷いてみんなのところに戻ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!