2章 初心者

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旅立って4日経った。 4日目の朝も森の中で、最初の町以外、ここまで全部野宿だ。野宿続きで流石に森の中で寝ることも慣れた。 というより、野宿で寝るという興奮よりも、体が限界で睡眠欲が上回ったと言うべきかな。 ペガサスの話は誰にもしていない。レミにも口止めをしておいた。誰かに言ってしまっては、この旅が終わってしまい兼ねない。なぜなら、あたしの正体をペガサスが知っていたから。自分でもわからないのに、正体を知っているペガサスの話をしたらどうなるか。そんなのまた、あの白峰村(鳥籠)に戻されるに決まっている。今度こそ高校生として通わなければならない。それだけは絶対に嫌だ。だから、誰にも言わないことにした。 「どうしたの? まずかった?」 昼食の途中で考えていたからか、いつの間に手が止まっていた。真澄が心配して、あたしの顔を覗く。料理担当は、真澄だから、変な不安をさせてしまった。 あたしはブンブンと、自分でも大袈裟だと思うくらい首を横に振った。 「ごめん! ちょっと疲れてて……。真澄の料理は本当に美味しいよ!」 実際、疲れていたし、真澄の料理もおいしかった。今日は簡単にパンケーキを作ったけど、そのパンケーキもふっくらしていて、お店のものと全く変わりない。お店で食べたことないけど。 「本当? 無理しないで残していいからね?」 「ううん。ほんとごめん。疲れてボーッとしてただけ」 「真澄、本当のことだと思うぜ。こいつ、俺が好きな味と同じ味好きだし」 お兄ちゃんがフォローしてくれた。真澄が少し顔を赤らめながら、あたしを見て、にこりと笑った。良かった。信じてくれた。人間関係って、こんな些細なことでも崩れやすいものなのか。気を付けよ。 気を取り直して、真澄の極上のパンケーキを口に頬張った。
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