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「ねぇ君、どうしたの?」
ふと見上げると、声の主は店の入り口に佇んで私をまじまじと見つめていた。
「私ここのバイトなんだけど、窓から君が見えたからずっと気になっちゃって。あ、隣座って良い?」
彼女はそう言うと濡れるのも気にせず私の横に腰を下ろし、相変わらずの空模様を眺める私の顔を観察するように再び見つめる。
「ああ、雨凄いもんね~ほんと嫌になっちゃう」
そう文句を言いつつ、彼女の表情は何故か嬉々として見えた。彼女は大仰に身振り手振りをしながら私に人懐っこく話しかける。
それを別にうるさいとは思わないが、賑やかのは性に合わず、どこか別の場所を探そうと私はベンチから立ち上がり、テントの外に足を踏み出す。
「あれあれ? 帰っちゃうの?」
すると彼女は立ち去ろうとする私を何故か傘をさして追いかけてくる。何事かと立ち止まる私を傘の中に入れると、
「私も帰るとこだから途中まで入っていきなよ、なんならウチに来る?」
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