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なんだか気になり、じーっと目の前の顔を見てみる。と、水たまりに映る顔が急に動き出した。
「だめ、亜理紗、こっちの世界に来ちゃダメよ!」
現実的に有り得ない状況に、亜理紗は慌てて目をこすり……。
『プップー!!』
突然車のクラクションがすぐ近くで鳴り響き、亜理紗の頭は不意に現実へ引き戻される。慌ててぺこりと車の運転手へ頭を下げると、ダッシュで信号を渡りきる。思わず小さくため息をつき、冷静になった亜理紗の顔に、つい少し前の水たまりに映る顔が流れてくる。はっとし振り返り、水たまりを注視するが、当然ながらそこには何も写ってはいなかった。
(気のせいかな…?)
首をかしげ、ゆっくりと学校へ向け歩き出す。頭の中で先程までの不思議な映像がリピートされる。そして気づいた。
(水たまりに映る空、晴れてたなぁ……)
まるで別世界のように、水たまりに映る自分の背景は晴れており、雲一つ無かった。なんだか不気味で亜理紗の背中に妙な寒気が走る。と、ポケットに入れていたスマートフォンが振動し始める。慌てて取り出してみると、友人からの電話だった。画面には一緒に時刻も表示されていた。時間は…八時二十八分。遅刻確定二分前のお知らせだ。亜理紗はそれを目にし慌てると、学校へ向け全速力で走って行った……。後に残るは雨の降る、いつもとほぼ変わらない日常の景色だった。しかしビルの影にひっそりと身を潜め、亜理紗の様子を見ている者がいた。黒いフードを頭からかぶる謎の影。影は亜理紗が走り去るのを見届けると、ニヤリと不気味笑みを浮かべ、雨の降る街中へと消えていった……。
……To be continued*°
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