第1章 警告

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水たまりから始まる生と死の狭間 千羽紫苑  私は一度、この世界で命を落とした……。  最初の事件が起きたのは、台風の季節とも言われる九月半ばの事だった。その日は台風が近づいており、雨が降っていた。滝のような雨が降る中、一ノ瀬亜理紗は全速力で学校へ向かって走っていた。時刻は八時二十分を過ぎており、遅刻ギリギリである。雨水が足にはね、濡れるのも構わず走っていると、少し先に交差点が見えてきた。青だった信号が点滅し始める。急いで走る亜理紗の横を、自転車がすいーっと通り過ぎ、点滅している信号を渡っていく。遅刻ギリギリで焦っているせいか、自転車に乗っている人が恨めしい。信号の点滅が終わり赤になったが、亜理紗は構わず横断歩道へと飛び出した。その途端、足元にあったマンホールで亜理紗は足を滑らせた。一瞬の後に地面へと背中が叩きつけられ、気づくと亜理紗は地面に転がっていた。 「……痛っ…」  あまりに突然の衝撃に、ほとんど声も出ない。あまりの痛さに一瞬意識が飛びかけた気すらする。じんじんと痛む背中をさすりつつ鞄を手に取ろうとする。運悪く、鞄は水たまりに浸かっていた。じっとりと濡れた鞄を持ち上げようとした時、水たまりに映る自分の顔と視線があった。 (あれ? これ自分の顔だよね、こんな顔だったっけ?)  水たまりに映る自分の顔は、毎朝鏡で見る自分の顔と同じだ。しかし、何かが違っていた。
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