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「あんたは変わってる。これからどうする気?私をこのまま生かしたら、任務から背くことになるよ?」
「それでも、僕は実際の君を見て、殺すほどの危険人物とは思えない。現に、メイアは誰も殺したことはないわけだし…」
ルイスは自分で言っておきながら、どこか自信なさげに呟いた。自問自答中なのだろう。
「それに、僕は何も取られるものも、どこかの貴族でもないのに、君は助けてくれた。見返りのない僕を、そんなメイアを僕は知ったんだ。噂の魔性の女ではなく、心優しい女性だということを」
初めてかけられる言葉は、私の心に沁みて、痛いような、くすぐったいような、言葉では言い表せない感情が湧いて、私の瞳から涙が流れた。
「どうして?」
私は何年も見たことのない、自分の涙に動揺した。そんな私に、ルイスは足を引きずり私に歩み寄り、頭を撫でた。
「ほらね。本当は、強がっている寂しがりやな普通の女の子なんだよ」
そういって、無邪気な笑みで私をみたルイスの顔を、私は一生忘れないだろう。私の心の鎧を初めて剥がした彼の存在を。
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