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もう、時間の感覚も薄れている…
多分…僕の残された時間は少ない…
それから何時間意識が無かったのかは判らないが病室に誰かが訪問してきたらしい。
雰囲気から察すると看護師でも母親でもなさそうだ。
「お兄ちゃん…こんにちは…」
病室に遠慮がちな声がこだました。
どうやら近所に住む瑠美ちゃんだ…
僕が元気な頃に時々家庭教師として勉強を教えていた女の子。
「あの…お兄ちゃん…元気になってね」
僕の顔を覗きこみながら瑠美ちゃんが言う…
目には涙が…
既に僕の病状の事を聞いてるのかも知れない…
かろうじて自由に動く右手で瑠美ちゃんの頭を撫でた…
「あのね…お兄ちゃん…
お兄ちゃんに少しだけ自由な時間をあげるからね。」
瑠美ちゃんが突然不思議な事を言った…
いや…もしかすると朦朧としている僕の聞き間違えなのかも知れない…
急に僕の意識が遠退いた……。
次に目覚めた時には、いつの間にか瑠美ちゃんが居なかった…
周囲を見ると病室が暗い…
いつの間にか夜になってたのか…
どうにも薬の作用で半日は意識が無い…
そして段々と一日の中で目覚めている時間が減ってる気がする…
それはつまり僕の命の時間が残り少ないを感じた。
だがもう…死に対する怖さや苦悩は僕の精神を通り過ぎて無感情に等しい…
だけど…その日の夜は、僕にとって今後の運命を考える時間がやって来たのであった。
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