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川の水は、流れているのかいないのか、よく分からない。
とろりと油を流したように、黒く静まりかえっている。
そこへ、お秀は、幾度も幾度も石を投げ入れ、静かな水面を波立たせた。
あと一回、もう一回……
一度でもいい、上手に出来たならば、もう思い残すことは無い。昏い昏いこの川に足を踏み入れようと思っているのだけれど。
ぽちゃん。
波紋は一つ。
たったの一つきり。
どうしても、出来ない。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
ぽちゃん――
自棄になってお秀は、次から次へと石を、川へと投げ入れた。
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