問わず語り

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なして分がるって? なしてだべな。分がるようになったの、おれ。 半分、この世のもんでながったんでねえが。 したから分がるんだべ。 その頃だら、山の麓だったって、雪積もってよ、 回るのもでぎねぇ。 杖だってもう、持てねぇしよ。 からだじゅう(いで)くてな、 力も入らねくて、動げねえ。 阿弥陀様んどごの穴で寝でらっけ。 なーまらしばれる(刺すように寒い)朝な、 穴の外、光ってんのが分がった。 傍の人がさ、おればおぶるの。(おんぶしてくれるの) 外さ出で、ほれ見れって上ば指す。 阿弥陀様がよ、金色(こんじぎ)さ光って、おれば見下ろしてるの。 なして見えだがは、分がんねぇ。見えだんだ。 見えだんでねくて、おれが頭ん中で作ったのがなあ。 最初はな、怒らいでるみたいで(こえ)がった。 したけどな、だんだん、褒めらいでるような気持ぢになってくんの。 やさしーい顔に見えでくんの。 周りにな、笛田の太鼓だのもってる仏さん、いてよ。 まぁるい、光る輪っか背中さしょって(せおって)、 きれぇな音してだなあ。気分いがった。きれぇだった。 おれは、指の無い手ぇ合わせで、「なまんだぶ」っつって 目ばつぶった。 したっけ、からだ軽ぐなった。 傍の人も、いねぐなった。 全部おれ、返したんだなって思った。 あー…。傍の人、ひとだったのがなあ。 衰弱の上凍死したんだって、いうんだべ? したけどな、おれは、なして死んだって聞かれだら、 此の世さ生きるのに要るもん、借りて生まれてきて、 返す時が来たから返したんだよってゆうと思うよ。 image=511799680.jpg
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