問わず語り

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問わず語り

あんた、どっから来たの? あ、東京(とうきょ)?ふーん。 ずんぶ遠ぐから来たんだねえ。 おらぃ?おーれも、遠ぐだぁ。 お参りさ来たの。(お参りに来たんです) おれは、儀助っつんだあ。(儀助と言うのです。) こったらどごさ(こんな所に)、(なん)しに来たの。 山ぁ、お参りさ来たんでねぇべ? 物見遊山が? 止めれ止めれ。死ぐ目さあうぞ。 こごはな、ずーっとお参りするどごだぁ。 手形持ってる人でねぇば、入らんねぇはずだぞ。 手形どごでもらったって? 村だよ。 書いでけるの。(書いてくれるんです) ありがてぐもなんにもねぇな。 これだっけ(これなんて)引導とおんなじだ。 要らねぇ人間さ、書ぐの。 居でもらったらダァメなのさ書ぐの。 おらぃの村はさ、(ちい)せくて、土地も痩せてでな。 一人生まれだら、一人死がねばなんねぇほど なんも採れなくてさ。 カツカツなのさぁ。とっても食って行がれね。 したけどよ、(ほが)に楽しみねぇば、生れるべ? どうにがこうにが、死がねぇようにやってきたのさみんな。 神さまがな、こごさ棲むなって決めだのに それば破ってへばりついでるようなもんさ。
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