問わず語り

5/9
前へ
/11ページ
次へ
すこししたら、お参り始まったな。 山のふもと、左まわりすんの。 菩薩さん、如来さま、明王さん。 崖みてぇなどごさ、仏さん彫ってある。 この辺は、地震多くてな。あちこち崩れでるのが殆どだぁ。 こったらどごまで来て、誰も直さね。 横さちゃっこい穴ある。 中さ入ったら、一人二人だら、寝らいだな。 雨風しのぐだげだぁ。 そいでも、ねぇよりはましだな。仏さんの近ぐだしよ。 一回よぉ、死んだ奴入ってら。お参りさんな。 どごだっけかなあ。 明王さんのとこだっけかなあ? 夏だったからな、ハエだの蛆だのたかって、匂いひでくてよ、 犬がなんかさ、喰われだんだべな、血ぃのついだあばら見えでら。 膨れだ顔に目ぇ剥いでら。 おれ飛び出したぁ。 一番近ぇ家さ入って教えで、弔ってもらったぁ。 なんだが、手慣れてだぞ。 ああ、俺もこんなになんのがなって、思ったさ。 宿もよ、夏はな、ひでぇの。やぶ蚊で。 宿っつったって、 小屋みてぇなとこの隅っこさ泊まらしてもらうんだから。 土間さ寝で。 厩とかな。臭ぇよ。しゃあないさ。 行ぐどごないもん。 そいでも食い物は、(あった)かいうぢは、恵んでもらえねくても、 そごらじゅうさあるの。 たんぽぽだべ、ヨゴミ(よもぎ)だべ、どくだみ、蕗。 山ん中で水くんできて、火もらったり起ごしたりして、煮て食うの。 蕗はぁ、獲っていってやればぁ、食えるやづ…煮つけたやづ けだ(くれた)人もあったなあ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加